貴船神社は現在、貴船神社本宮、結社(中宮)、奥宮と三社に分かれています。この奥宮は本宮の上流約700m(徒歩片道約15分) の所にあり、以前はここが本宮でした。永承元年(1046年)に水害で被災したため、天喜三年(1055年)に、現在の本宮に遷座されました。
奥宮の祭神は闇龗神(くらおかみのかみ)を祭神とするが、本宮の高龗神と同じ神であるとされています。降雨、止雨を司り、降った雨を地中に蓄えて適量湧き出させる働きを司る神様で、「龗(おかみ)」という字は「龍」を意味する古語です。
結社から4~5分、鳥居をくぐって思ひ川橋を渡ると、老杉の先に奥宮の神門が見えます。手水処で口をすすぎ、神門をくぐると、京都の結界、パワースポット「龍穴」の神々しい気を感じます。
拝殿の奥、本殿の下に龍穴があります。龍の神「龗」(おかみ)はその昔、龍の水飲み場と言われた神泉苑の池で水を飲まれたのでしょうか。
奥宮本殿の西側にあり、船の形をしています。神武天皇の母神様・玉依姫さまが浪速(今の大阪)より水源の地を求め、黄色の船に乗って鴨川をさかのぼり、貴船川から着き、そのとき乗ってこられた船を小石で積み囲み隠したと伝えられています。今でも航海や旅行にその小石を携帯すると航海・旅行安全と言われています。
神門をくぐり左手、末社・日吉社の横に杉と楓が合体した珍しい木があります。連理の杉と名づけられ、神木になっています。
鋤(農耕)と雷の霊力を合わせた神、味耜高彦根命(アヂスキタカヒコネ)の社。別名は大和国葛城の賀茂社の鴨氏が祭っていた神、賀茂社の神。鴨氏は出雲から大和に移住したとする説もあります。
狛犬は風格があり、威風堂々としています。古くは獅子と言っていました。貴船神社の奥宮は安部清明が(ワキ)の謡曲「鉄輪(かなわ)」でも有名です。宇治の橋姫が、丑の刻参りをして男に呪いをかけた伝承からうまれた「鉄輪」は、頭に鉄輪をつけ、鬼女となった悲しい女性の話ですが、本来の丑の刻参りは、祭神が丑年丑月丑日丑刻に降臨した古事に因み、心眼成就すると言うことです。
※橋姫が頭にかぶっていた鉄輪(かなわ)を置いたとされる「鉄輪掛石」が今も叡山電鉄「貴船口」駅のかたわらにあり、能の夫婦の住まいは、下京区堺町通松原下ルです。河原町通りの五条と六条の間の左手辺り『鉄輪井戸』として今でも史蹟として残っています。